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老人ホーム豆知識
心と体に効果的!園芸療法とは?
基礎知識
植物に触れたり花の香りをかぐだけで心が癒された経験はありませんか?
現代社会は心身に影響を与えるストレスに満ちています。園芸療法は森林浴やアロマセラピーなどと同じく、植物や花の「癒やし」の効果によってストレスの緩和を図り、心身の健康回復を図ろうとするものです。日本では2008年に日本園芸療法学会が作られ、医療・福祉・教育などさまざまな現場で園芸療法や園芸活動が取り入れられています。今回は、この園芸療法について詳しく見てみましょう。
園芸療法とは
歴史
園芸療法は心や体を病んだ人たちのリハビリテーションの一環としての園芸活動をセラピーの手段として利用するもので、第二次世界大戦後1950年代からアメリカ合衆国や北欧から始まりました。
アメリカでは主に、戦争からの帰還兵の心の癒しの手段として発展してきましたが、北欧では当初障害者の社会参加や社会復帰の考え方を主導する“ノーマライゼーション”の一環として考えられていました。
現在は主にリハビリテーションやうつ病などの精神性疾患の治療を目的に園芸療法が行われています。日本には1990年代はじめに紹介され、主に高齢者介護施設や障害者施設で機能回復訓練を目的に導入され成果を上げています。
園芸療法の目的
現在、園芸療法は知的障害、精神障害、身体障害をもっている方、加齢により日常生活に困難を来たしている方、更正を必要としている方、薬物依存などで社会生活に支障を来たしている方などを対象に、施設・病院・在宅で取り入れられています。植物を育てることによって以下6つの項目のように身体、精神、知能、社会的に良い効果をもたらしたり、損なわれた機能を回復することを目的として行われています。
- 生きがいづくり(収穫の楽しみ、将来を期待)
- 運動不足の解消、筋力低下の予防
- 外出機会の獲得
- 社会性の維持(人間関係の改善、責任感)
- 生活能力の維持(料理、販売)
- 落ち着きや意欲向上など精神面の効果
家庭での園芸とのちがいは?
園芸療法では特別な作業を行ったり、特別な植物を扱うわけではありません。その点ではご家庭の園芸作業と変わりません。しかし、園芸療法は治療やリハビリという性格を持つ為園芸療法士とともに意図的・計画的に活動を行っていきますのでご家庭での園芸とは違っていると言えます。
園芸療法の手順は以下のように行います
- 園芸療法の処方から初期評価
- 目標設定
- プログラムの計画と実施
- 対象者の観察と記録
- 園芸療法の評価
定期的に外に出て四季の移り変わりを感じたり、草取りや水やり収穫などで体を動かしたり、参加者同士でコミュニケーションを取ることも重要となります。園芸療法の目的は植物をうまく育てて収穫を得ることではなく、植物を育てる体験を通して心身の機能を改善し、リハビリテーションや治療、福祉、教育、レクリエーションに役立てていくことです。園芸療法士は、育てる人が自発的に植物と関わるように見守りながら支援していきます。
園芸療法の効果
園芸療法は、さまざまな良い効果を期待することができます。植物とともにゆったりとした時間で動く心地よさやリラックス感、役割を持つことの意味を感じていただき毎日の生活を充実したものにしていきます。
主な効果7つを見ていきましょう。
- 世話をした植物の成長や収穫を楽しむことができる。
- 水やりや間引きをするなどの役割活動ができる。
- 植物の成長度合いや水やりの時間などを把握する機会ができる。
- 植物を育てることで不安やうつ症状を和らげることができる。
- 主体的に声をかけるなど、他者との関わりが増える。
- スコップなどの道具の使用や収穫した野菜で調理など日常生活動作をする機会ができる。
- 植物の成長や気温といった季節感が目覚める。
他にも植物の成長を見に行くという行動目的ができる事で、歩行の機会を増やす事ができます。適度な運動が習慣づく事によって、新陳代謝が高まり、快眠導入をもたらします。
また、屋外で植物を育て、さらに育てた野菜を食べることによって、視覚・触覚・嗅覚・聴覚・味覚すべてがフルに刺激されるので、五感をリフレッシュさせることができます。
- 視覚:風にそよぐ様子、四季の変化を目で感じ取る
- 聴覚:鳥のさえずりや虫の鳴き声、こすれる葉音
- 嗅覚:植物が発する香り
- 味覚:ハーブティ、収穫物の味
- 触覚:土の感触、水の冷たさ
認知症ケアとしての効果
前述の通り、園芸療法は五感を刺激するなど、活動を促進する効果があります。“生きる喜び”“できる喜び”を感じることで認知症予防、認知機能の維持・向上が期待できます。
認知症効果への期待
- 自分で育てることで自尊心や充実感が生まれる
- 植物の成長を楽しみ、未来へ対する期待
- 開花・結実・収穫などの達成感を味わい自信を持つ
- 身近な人とコミュニケーションが増え、社会性を維持する
身体機能効果への期待
- 運動促進
- 握力の増加
- 端座位持続時間の増加
- 血糖値、コレステロール値・中性脂肪の改善
認知症を発症すると、見当識障害によって時間の変化を感じにくくなります。認知症の方にとって、季節の変化を感じることができ、日々育っていく植物は大変心地良い存在です。植えたこと自体を本人が忘れてしまっていても、その都度、植物の成長を楽しめる点も認知症ケアとして効果的です。
まとめ
「支援を必要としていない私たちには関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
あなたが想像している以上に“植物を育てる”という行為はストレスや不安を軽減し、精神的な安定につながります。園芸療法と聞くと難しそう…と思ってしまう方もいるかもしれませんが、小さなプランターに種を蒔いて育てることから園芸の効果を実感してみてはいかがでしょうか?
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