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老人ホーム豆知識

老人ホームにおける感染症対策

基礎知識

免疫力の弱い高齢者が生活する老人ホームでは、働く職員や施設内でさまざまな感染対策を行なっています。ここ数年、新型コロナウィルスの影響もあり感染予防対策について多く取り上げられるようになりましたが、老人ホームにおいては一時的な対策ではなく、常日頃から感染症の対策を行なっています。ここでは、高齢者がかかりやすい感染症の種類や感染経路、老人ホームにおける感染症対策などをご紹介いたします。

感染症とは

感染症とは、何らかの微生物(病原体)が体内(臓器や組織)に侵入し、何らかの症状がでる病気のことを言います。侵入した病原体が身体の免疫力と抵抗力よりも強い場合に感染症が発症します。身体の免疫力と抵抗力が非常に弱い場合、普段は何ともないような病原体に感染し、病気になることもあり、それを日和見感染と言います。とくに、高齢者は免疫力と抵抗力の低下した方が多いため、日和見感染を起こしやすくなります。

いま現在、猛威をふるっている新型コロナウイルス以外でも、インフルエンザ、ノロウイルス(感染性胃腸炎)が代表的な症例で、特に空気が乾燥しやすい冬の季節は、細菌やウイルスが飛散しやすく、老人ホームでも感染対策には神経を尖らせています。

新たな感染を防ぐためには、その感染経路を遮断することが最重要です。そのため、施設で働く職員一人ひとりが徹底した予防対策をすること。これは決して勤務中に限った話ではなく、休みの日に自宅にいるときや外出中も含め日常的に感染対策をおこなう必要があります。

高齢者がかかりやすい感染症と感染経路

感染症と言ってもさまざまな種類があります。高齢者がかかりやすい感染症には、下記のようなものがあげられます。細菌によっては、全身に炎症反応が起こる敗血症になり死に至る感染症もあります。そのため感染症は早い対応と対策が大切になります。

感染症名 感染経路 感染手段
結核、麻疹など 空気感染 空気中を漂う菌を吸い込んで感染
風邪、インフルエンザ、レジオネラなど 飛沫感染 会話やせき、くしゃみをしたときの
飛沫から感染
腸管出血性大腸菌感染症、
A型肝炎、食中毒など
経口感染 病原体に汚染された水や食べ物の他、
病原体に触れた手指が口に入る事で感染
ノロウィルス、MRSA、
インフルエンザなど
接触感染 皮膚、粘膜にいる病原体が
手指や衣類などを介して感染
B型、C型肝炎、エイズなど 血液感染 血液の中の病原体が注射や傷口からの接触
などにより体内へ入り感染

老人ホームにおける具体的な感染対策

うがい・手洗い・検温の徹底

施設入館時にうがいと手洗いならびに検温(体温測定)を実施します。こまめに手を洗い、同時にアルコールや次亜塩素酸水などで消毒をします。とにかく外部から細菌やウイルスを持ち込まないことが最大の予防策になります。

接触場所の消毒

施設内には、多くの人が接触する箇所がたくさんあります。例えば、食堂のテーブルやドアノブ、手すり、エレベーターのボタン、スイッチ、など不特定多数の人が接触する箇所は1日に数回、念入りにアルコールスプレーで消毒して回ります。

排せつ物と嘔吐物の処理

感染性胃腸炎(ノロウィルスなど)や大腸菌は人間の排泄物や嘔吐物を媒介に広がります。そのため迅速かつ適切な処置が大切です。汚れた場所は入念な清掃が必要となります。また、介護者が感染する可能性があるため、処置の際は使い捨ての手袋やエプロン、マスクを着用します。それでも汚物が洋服やシーツに付着した場合は速やかに新しいものに交換します。

換気

新型コロナウィルス予防への意識が高まる今、改めて換気の重要性が指摘されるようになりました。換気の目安として、1~2時間ごとに約10~15分窓を開けて換気するなど、施設ごとにルールはありますが、高齢者は急な温度差によって体調不良を引き起こすこともあるので、入居者に確認をしながら換気をするようにします。

湿度管理

加湿器を使用し、一定の湿度(40%〜50%以上)を保つことでインフルエンザなど、空気感染のリスクが低減するとされています。特に、高齢者施設の中でも食堂やロビーなど、人が集まる場所の湿度管理は特に大切になります。ただ、湿度ばかり気にしていて、空気清浄機の定期的なメンテナンスを怠ると怖いことになりかねません。なぜなら貯水タンク内に付着したヌメリから発生した菌が室内に噴出してしまうことがあるからです。そのため加湿器は定期的なメンテナンスが必要となります。

感染対策と面会の両立について

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、老人ホームでの見学会や面会のスタイルが変わってきました。その新しいスタイルが「オンライン見学会です」。見学会や面会が従来通り開催されにくくなった今では、オンラインでの施設見学会や面会を行う施設が増えています。オンライン面会はネット環境が整ってさえいれば便利なことが多く、遠方や海外に住む家族とも簡単に面会をすることが可能になります。

まとめ

~「日常を取り戻そう」~

老人ホーム運営側は、入居者の安全を守る義務があり、厚生労働省のガイドラインに従って、日々感染症予防と拡大防止に努めています。それでももし、感染者が出てしまった場合は他の入居者に不安を与えず、なるべく普段通りの生活を送っていただけるように対応を行なっています。老人ホームに訪れる際は、今一度1人ひとりが感染予防について考え、「かからない」「広めない」感染対策について考えてみてください。

ホスピタルメントは、全国で病院、クリニックを運営する桜十字グループが地域医療で培った経験とノウハウを詰め込んだ有料老人ホームです。医療機関との連携による「医療のバックアップがある介護」で安心の土台を支えます。

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