お客さまの「願い」を
私たちが叶える日

歌舞伎を
観にいきたい

持永さだ子さん91

「長唄と三味線をやっていた母が歌舞伎や宝塚が好きだったので、戦前の女学生時代にはよく姉と観劇に行っていました」という持永さん。戦争で歌舞伎座が焼けてしまい、復興した後に再び客席に座り、緞帳が開いた向こう側に役者の姿を観たときは、「平和が戻ったんだ」と感動で涙が頬をつたったことを今も鮮明に覚えているそうです。
そのときに主演を務めた役者が、十一代目市川團十郎さん。今回、どうしても観に行きたかった「海老蔵改十三代目團十郎襲名披露公演」には、そんな思い出がたくさん蘇る特別な公演でした。
「歌舞伎は役者のみなさんが人生をかけて、命そのものを表現する。そんな場所ですから、観させていただくこちらもきちっとした格好をするべき、というのは母の教えです。身なりを整えると心も整う。着物を着て、締めた帯を手でしごき、覚悟を決めて行っていたものです」

ご一緒に公演を観に行かれたのは、持永さんの小学校からの同い年の友人お二人。何と3人で集まってお会いするのは小学校以来だそう。
「疎開先だった九州・小倉の小学校で一緒だったの。私が東京に引っ越してからは、電話や手紙でやり取りしたりして、『いつかかまた会いましょう』と言いながら、なかなか会えなくてね。今回、何故かふと、あの2人に声かけてみようかなと思ったのよ。昔のあだ名で呼びあいながらたくさんお話して、大好きな歌舞伎を見て楽しみました。後で友人に電話をしたら『なかなかチケットが取れない襲名披露歌舞伎を見ることができて、夢の様だったわ』と感動していました。子供の頃の友人とこの歳になって再開し、ともに時間を過ごすって幸せな事だなと思いました。学校の頃の友人っていいですね。また文化・芸術を楽しめるということは、世の中と自身の生活が平和であるということ。『置かれた場所で咲きなさい』が私のモットー。これからも健康で元気に過ごしていきたいです」。

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